米国のトランプ大統領は9月18日、デンマーク領グリーンランドの安全保障について、米国が「恒久的な管理権」を得ることで、デンマーク・グリーンランド自治政府と合意したと発表しました。協定は9月22日、国連総会の一般討論に合わせて署名される見通しです。
見出しだけ見ると「併合」を連想しますが、実際はそうではありません。フレデリクセン首相は「デンマーク王国の主権と領土の一体性、グリーンランドの人々の自決権を認める合意だ」と強調しました。ここに、主権国家体制という発想の面白さが表れています。国際社会での「主権」とは、誰が公式な統治権原を持つかという話であり、実際にその土地を守る実務を誰が担うかとは、切り離して考えられるのです。今回の合意は、デンマークが主権を保ったまま、安全保障の実務的な管理を米国に委ねる、という組み合わせでできています。
では、なぜ米国はこれほどグリーンランドにこだわるのでしょうか。答えは地図の上にあります。北極圏の氷が溶け、新しい航路や資源への関心が高まるなか、地政学の視点で見れば、グリーンランドは北極海への玄関口という動かせない位置にあります。トランプ氏は「米国の敵対国は書面による承認なしでは、グリーンランドに基地を置いたり、機微な投資を行ったりすることはできなくなる」と述べ、ロシアと北極進出を強める中国を念頭に置いていることを明かしました。米側に費用負担は生じないとも説明しています。
地理は動かせません。だからこそ、その場所を誰が事実上守るかという取り決めが、地図が変わらない限り繰り返し争点になり続けます。