高市早苗首相とトランプ米大統領が、国連総会に合わせて米ニューヨークで9月22日に会談する方向で調整に入りました。注目すべきは日程です。この2日後の24日には、ワシントンでトランプ氏と中国の習近平国家主席による米中首脳会談が予定されています。日本側には、この大国どうしの会談を前に、対中政策についてアメリカとの認識をすり合わせておきたいという狙いがあるとされています。
なぜ、大国どうしの会談の「前」に、同盟国との会談が挟まるのでしょうか。外交は、いきなり本番の交渉のテーブルに着くところから始まるわけではありません。関係する国々と事前に立場を伝え合い、懸念を共有し、認識をすり合わせておく——この地道な積み重ねこそが、外交という営みの土台です。日本にとって、米中関係の行方は自国の安全保障や経済に直結する問題です。だからこそ、当事者どうしの会談が始まる前に、自国の立場を直接伝えておく機会を作ろうとするのは、外交の基本的な作法だと言えます。
この動きの背景には、国際社会には世界政府が存在しないという、もう一つ大きな構造があります。国内であれば、上位の政府や裁判所が利害を調整してくれます。しかし国際社会には、そうした強制力を持つ上位機関がありません。だからこそ、それぞれの国が自ら交渉のテーブルに着き、対話を重ねて秩序を作っていく必要があるのです。大国どうしの首脳会談の前に、同盟国どうしがまず言葉を交わす——一見地味なこの積み重ねこそが、無政府状態の国際社会がそれでも一定の秩序を保っていられる理由の一端を示しています。