「今は良いが、この先はどうだろう」——2026年10月1日に発表された日銀短観の9月調査は、まさにそんな企業の本音を映す結果になりました。大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス24と、前回の6月調査(プラス22)から6四半期連続で改善。約8年半ぶりの高水準です。
ここで思い出したいのは、DIが「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた差だという点です。経済指標は売上や利益そのものではなく、企業の実感を集計した道具であり、何を測っているかを押さえて初めて数字の意味が分かります。今回の改善を押し上げたのは、データセンター向けなど旺盛なAI関連需要です。鉄鋼が12ポイント、非鉄金属が9ポイントと、素材産業への恩恵が目立ちました。
ただし気になるのは、3か月後の見通しを示す「先行き」がプラス21と、今回よりやや下向きだったことです。景気は良い時期と悪い時期を波のように繰り返すもので、今が良いからといって先行きまで単調に良くなり続けるとは限りません。現状の改善を支えているのがAI関連需要という特定の要因である以上、企業自身がその持続性に慎重な見方を持っていることの表れだと読めます。「今の良さ」と「この先への自信」は別物——これは短観に限らず、好決算を発表した企業が同時に先行き慎重な見通しを示すようなニュースを読むときにも使える視点です。