長年のライバルが、車の「頭脳」で手を組みます。報道によれば、ホンダと日産自動車が、次世代車の基本ソフト(OS)を日産の技術をベースに共同開発する方向で最終調整に入りました。車全体を動かす電子制御ユニットも共通化し、8月にも正式合意を目指すとされています。
素朴な疑問から始めましょう。競い合ってきた二社が、なぜいちばん大事そうな部分を一緒に作るのでしょうか。手の内を見せ合うようで、損に思えます。
鍵は、次世代車が「ソフトで定義される車(SDV)」へ変わりつつあることです。スマートフォンのように、買った後もソフトを更新して自動運転などの機能を足していく。すると価値の源が金属の部品からソフトの開発へ移り、その費用が跳ね上がります。膨大なソフトを毎年書き換え続ける負担は、一社で背負うには重すぎる。ここで会社は、自前で抱えるか、他社と組むかという古くからの選択に立ち返ります。土台を二社で分担すれば、費用は割り勘になり、先を走る米国や中国のメーカーに追いつく速さも稼げます。
もう一つ、OSという言葉が効いてきます。OSは車の「土台」であり、そこに部品メーカーやアプリが集まるほど便利になり、便利だからさらに人が集まる。このネットワーク効果が働く土台は、握った側が強くなりやすい。だからこそ、どちらのOSを軸にするかが交渉の焦点になり、今回は日産の技術がベースに選ばれた、と読めます。
持ち帰れる読み方はこうです。ライバル同士の協業を見たら、「仲直り」ではなくどの層で組み、どの層で競うのかを分けて眺めてみる。土台(OS・基幹部品)は共通化して費用を下げ、その上の乗り味やブランドでは競い続ける——多くの協業はこの形をとります。層に分けて見えてくると、次にどこが共通化されそうかまで見通せます。