「国債」と聞くと地味な響きですが、いま個人向け国債の売れ行きが記録的なペースになっています。2026年度の4〜8月、わずか5カ月間で発行額は約4兆円、前年同期比で6割の増加です。2025年度は1年かけて6兆円台だったので、その半分を5カ月で超えてしまった計算になります。
なぜ今、地味な安全資産が選ばれているのでしょうか。答えは商品そのものが変わったからではなく、金利という土台が動いたからです。個人向け国債は、国が元本と最低金利0.05%(年率)を保証する、金融機関で1万円から買える超低リスクの商品です。この「元本保証・最低金利」という仕組み自体は以前から変わっていません。変わったのは、歴史的な金利上昇を受けて、固定5年など利率の水準そのものが切り上がったことです。
ここで役立つのがリスクとリターンの見方です。「リスクを取るほどリターンが上がる」という関係だけを覚えていると、この現象は説明できません。実際に動いたのは、市場全体の金利という土台のほうです。土台が切り上がれば、リスクの大きさを変えなくても、同じ低リスク商品から得られるリターンの絶対水準が底上げされます。かつては「金利が低すぎて割に合わない」と見向きもされなかった安全資産が、金利のある世界では見直される——今回の記録的な発行額は、その変化を数字で映し出しています。金利が動くたびに、預金・国債・株式それぞれの相対的な魅力がどう変わるかを見る癖をつけておくと、次に金利が動いたときのニュースも同じ型で読めます。