日本製鉄が、スロバキアのコシツェ製鉄所に9億ユーロ(約1600億円)を投じ、2030年の稼働開始を目指す電気炉と酸素プラントを新設すると発表しました。この製鉄所はもともと日本製鉄が買収したUSスチールが持っていた欧州拠点で、10月からは社名も「Nippon Steel Slovakia」に変わります。
モノ・カネ・人・情報が国境を越えて結びつくグローバル化の時代、企業は「どこで作るか」をたえず選び直しています。日本から鋼材を船で運ぶのではなく、需要地である欧州の中で作る道を選んだ背景には、環境規制の厳しい欧州で「CO2の少ない鋼材」を安定供給したいという狙いがあります。高炉に比べ、電気炉はCO2排出量を大きく抑えられるからです。
貿易で結びついた国同士は、利益とともに、相手の事情に左右される脆弱性も背負います。日本から遠く運ぶコストや関税・政策リスクを避け、需要地である欧州の内側に自分の生産拠点を持っておく——今回の投資は、グローバル化の恩恵を保ちながら、依存のリスクを自ら小さくしようとする企業の判断とも読めます。