アズリテ
ニュース2026年9月19日

宇宙の『謎の赤い点』の正体——スパコンが解いたブラックホール急成長の一部始終

3 行サマリ
  • 国立天文台などの国際研究チームが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙誕生後10億年に
  • 満たない時代に多数発見した謎の天体「リトル・レッド・ドット」の正体を、スーパー
  • コンピュータ「アテルイIII」によるシミュレーションで解明したと発表した。太陽の
  • 50万〜90万倍という超大質量の星が「種ブラックホール」となり、約6億年で太陽の
  • 約3000万倍にまで急成長する過程を、一つながりの物理過程として再現した。
この記事の概念宇宙論科学的方法

このニュースを読むための教養

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星と銀河——宇宙の構造
銀河の中心にブラックホールがあるという基本構造を先に知っておくと、何が『急成長』したのかが見えやすくなる・約 4 分
まず 4 分で学ぶ
宇宙論——始まりと果てを問う
観測された謎を理論とシミュレーションで検証していく宇宙論の進め方を先に知っておくと、この研究の位置づけが分かりやすくなる・約 3 分
まず 3 分で学ぶ

教養の視点

宇宙誕生から10億年に満たない、ごく初期の時代。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、そこに奇妙な天体を次々と見つけました。小さく、赤く見えることから「リトル・レッド・ドット」と呼ばれています。銀河の中心で成長するブラックホールらしいとは考えられていたものの、一つ大きな謎がありました。周りの星の総質量に比べて、ブラックホールがあまりに重すぎたのです。

宇宙論の世界では、観測で見つかった謎を前に、いきなり「こういうものだ」と決めつけることはしません。まずあり得る仕組みを考え、それが本当に観測結果を説明できるかを、計算で確かめていきます。今回、国立天文台などの国際チームがこの手順を実行しました。使ったのは、天文学専用のスーパーコンピュータ「アテルイIII」です。数億光年規模の宇宙の広がりから、個々のガス雲という小さなスケールまでを一貫して計算できる「ズームイン・シミュレーション」という手法を新たに開発しました。

結果はこうです。宇宙のごく初期、星が生まれる材料が濃く集まった領域(原始銀河団)では、太陽の50万〜90万倍という桁外れに重い星ができることがあります。この星が潰れてできる「種ブラックホール」は、太陽の約100万倍。これが周囲のガスを勢いよく取り込みながら、わずか6億年ほどで太陽の約3000万倍にまで急成長する——シミュレーションはこの一連の流れを、一つながりの物理過程として初めて再現しました。ガスに包まれた状態で輝く様子は、望遠鏡が捉えたリトル・レッド・ドットの見え方ともよく一致しています。

一つの観測結果の裏には、いくつもの仮説と、それを試す計算があります。星と銀河の中心に潜む巨大ブラックホールが、宇宙のごく初期からどう育ってきたのか——今回の成果は、その空白を埋める有力な一枚になりました。

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