総務省が発表した8月の消費者物価指数、話題になったのは「1.7%上昇」という見出しの数字ではなく、その裏にある一つの品目でした。緑茶です。前年同月比でなんと31.5%の上昇。比較可能な統計が残る1971年以降で、最大の伸び幅だといいます。
全体の指数はむしろ落ち着いています。政府のエネルギー補助金が電気・都市ガス・ガソリンの価格を抑え、指数全体を約0.62ポイント押し下げました。この効果もあって、物価指数の上昇率は8カ月連続で2%を下回っています。「物価は落ち着いている」——見出しだけを読めば、そう感じても不思議はありません。
ですが物価指数は、無数の品目の価格変動を一つの数字にならした平均です。平均が穏やかだからといって、中身の一つひとつまで穏やかだとは限りません。緑茶の急騰は、その典型例です。
なぜ緑茶だけこれほど値上がりしたのか。記事が挙げる理由はシンプルです。近年の抹茶ブームで、抹茶向けの需要が世界的に拡大しました。すると生産者は、限られた茶畑を抹茶用の栽培に振り向けるようになります。抹茶に回った分、普段私たちが急須で淹れるような緑茶(煎茶など)の生産量は圧迫される。作れる量が需要に追いつかなくなれば、需要と供給の基本どおり、価格は上がります。ちなみにマグロも24.4%上昇しており、こちらは外国船の供給制約や燃料高が背景です。品目ごとに、値上がりの理由はまったく違うわけです。
「物価は1.7%しか上がっていない」というニュースを見たとき、そこで思考を止めず「では、どの品目が特に動いたのか」まで一歩踏み込んでみる。平均という数字の裏には、いつも個別のドラマが隠れています。