東京大学は9月28日、藤垣裕子教授(専門は科学技術社会論)を第32代学長に選出したと発表しました。就任は2027年4月からで、東大として初めての女性学長です。
注目したいのは、選ばれ方です。教職員らによる2回目の意向投票では、副学長の染谷隆夫氏が1107票を集めて1位、藤垣氏は553票で2位でした。それでも最終的に学長に選ばれたのは藤垣氏でした。学長選考会議が、投票結果に加えて各候補の所信表明などを総合的に考慮し、藤垣氏を選んだためです。
「1位でなかった人が選ばれる」と聞くと、民意が覆されたように感じるかもしれません。しかしこれは、集団で決める難しさを踏まえると、多数決には多数決なりの弱点があるからこそ設計された仕組みとも読めます。票数だけで決めると、瞬間的な人気や組織内の力関係が結果を左右しやすくなります。選考会議という一段別の主体を挟むことで、票数以外の情報(実務能力や将来構想など)も判断材料に加えられるようにしているのです。
これは、大学という組織が、目的(良い経営判断)を達成するためにどんな意思決定の仕組みを持つかという設計の問題でもあります。実際、今年6月の京都大学でも、意向投票で3位だった候補が学長に選ばれており、単発の出来事ではありません。投票の「結果」だけでなく、その結果を最終決定にどう反映させる仕組みになっているかまで見ると、組織のニュースがもう一段深く読めます。