銀行どうしの統合と聞くと、「地方は苦しいのだろう」と読みたくなります。今回のいよぎんホールディングス(伊予銀行)と愛媛銀行の話にも、人口減少という背景は確かにあります。ただ、きっかけとしてもう一つ効いているのは、一見すると正反対の出来事——日銀の利上げです。
金利が上がると銀行は儲かる、とよく言われます。貸出の利息が増えるからです。ところが同時に、金利は預金を集めるための費用にもなります。銀行が貸せるお金は、預金という原資があってこそ生まれる(お金は銀行が貸すことで生まれる)。つまり利上げ局面では、「貸して稼げる」と「預金の奪い合いが始まる」が同時に起きます。愛媛新聞が伝えた統合の背景にも、この預金獲得競争の激化があります。
そこに人口減少が重なります。地域の預金者も借り手も、長い目で見れば縮んでいく。パイが縮む中で金利を上乗せして預金を取り合えば、費用だけが膨らみます。だから競争のコストを下げる方向に手を打つ——それが統合という選択です。
面白いのは、その形です。2行は合併せず、持ち株会社の傘下に並びます。行名もそれぞれ維持する方向。銀行の費用の大きな部分は、勘定系システムや規制対応、本部機能といった「裏側」にあり、これは規模が大きいほど1件あたりが安くなります。一方で看板や店舗の名前は、地域の顧客との関係そのものです。壊せば客が離れる。だから表の看板は残し、裏の固定費だけを束ねる。会社という組織をひとつにまとめる理由が、まさにここに現れています。
ここから持ち帰れる読み方があります。企業の統合ニュースを見たら、「表の看板」と「裏のコスト」を分けて読むこと。名前が消える統合は、事業そのものの入れ替えであることが多い。名前が残る統合は、たいてい裏側の共通化が狙いです。どちらなのかが見えると、その統合が従業員や顧客、地域にどう効いていくのかまで見当がつくようになります。