地球には、途方もない高エネルギーの粒子——宇宙線——が宇宙から降り注いでいます。ところがその多くは電気を帯びていて、宇宙空間の磁場に進路を曲げられてしまう。だから「どこから来たか」を逆にたどれません。宇宙線が見つかって100年以上たつのに、その発生源はいまだ決着していない問いです。
そこで期待されているのがニュートリノです。電気を帯びず、ほとんど何にも邪魔されずにまっすぐ飛ぶので、届いた方向がそのまま発生源の方向になります。南極の氷の中に沈めた巨大な観測装置IceCubeは、この粒子を待ち構えています。2023年10月、そこに高エネルギーのニュートリノが1個届きました。そしてほぼ同じ方向・同じ時期に、Ibn型と呼ばれる超新星が見つかっていた。
Ibn型は、爆発前の星が自分の周りに濃いヘリウムのガスを吐き出していて、爆発の衝撃波がそのガスに正面衝突する型の超新星です。研究チームは可視光の観測から爆発の環境を推定し、そこがPeV(ペタ電子ボルト)級——人類最大の加速器LHCのおよそ140倍のエネルギー——まで粒子を加速できる「ペバトロン」の条件を満たすことを示しました。宇宙が持つ加速器の候補が、また一つ具体的になったわけです。
注目したいのは、研究チームの言い方です。論文は「発生源だと断定するものではない」と明記しています。方向も時刻もエネルギーも整合的。それでも、同時に起きたことと、原因であることは別物です。広い空のどこかで、たまたま近い方向・近い時期に超新星が起きる確率は無視できません。1件では統計になりません。
これは弱腰ではなく、作法です。研究ニュースの「〜の可能性を示した」は、「まだ何も分かっていない」ではなく「候補が一つ絞り込まれた」と読む。同じ型の一致がこの先いくつも積み上がったとき、それは確からしさに変わります。科学の前進は、たいてい鮮やかな断定ではなく、この地味な絞り込みの積み重ねでできています。