ガソリンスタンドが、静かに数を減らしています。帝国データバンクが2026年9月12日に発表した調査によれば、2026年1〜8月だけで144の事業者が倒産・廃業し、この時期としては過去10年で最多水準。過去10年の累計では、1700社を超える事業者が市場から退出したといいます。ニュースになりにくい変化ですが、地域の生活インフラが少しずつ縮んでいく典型例です。
背景の一つは、ハイブリッド車・EVの普及による燃料需要の減少です。新しい技術が古い産業を置き換える現象は、経済学者シュンペーターが「創造的破壊」と呼びました。馬車が自動車に置き換わったように、内燃機関の車が電動化していけば、給油という行為そのものの必要性が長期的に薄れていきます。成長の裏側で、誰かが痛みを引き受ける——創造的破壊の、痛みの部分がここに表れています。
もう一つの背景が、人口減少による商圏の縮小です。地方では、そもそも客になりうる人の数自体が減っています。特に深刻なのが、「地域で唯一の給油所」という立場のスタンドです。撤退すれば周辺住民が給油に困りますが、客が少なく固定費すら賄えない——増え続けることを前提に作られてきたインフラが、縮む社会の中で立ち行かなくなる、典型的な構図です。
記事が指摘するもう一つの興味深い点は、ガソリン販売そのものの利益は1リットルあたり数円程度ときわめて薄く、車検・洗車・板金整備といった「油外収益」がなければ経営が成り立たないという事実です。私たちが「ガソリンスタンド」と呼んでいる商売は、実はガソリンを売る商売ではなく、給油をきっかけに車まわりのサービス全体で稼ぐ商売だった、とも言えます。
需要を奪う新技術と、支える人を減らす人口動態。二つの力が同時に働くとき、一つの産業がどれだけ早く縮んでいくか——ガソリンスタンドの数字は、その一例を示しています。