アズリテ
ニュース2026年8月9日

燃料電池の白金を減らして寿命を延ばす——「活性か耐久か」の板挟みを構造で解く

3 行サマリ
  • ワシントン大学セントルイス校の研究チームが、燃料電池の心臓部である触媒について、貴金属の白金の
  • 使用量を抑えながら耐久性を高める新しい炭素の土台を開発したと発表した(Nature Nanotechnology、
  • 8月6日)。放射状の微細な穴をもつ中空の炭素球に触媒の粒を閉じ込める構造で、15万回の電圧サイクル後も
  • 性能の85%を保った。データセンターや車の電源として水素燃料電池を実用に近づける可能性がある。

このニュースを読むための教養

準備 0/2 完了
エネルギーをどう得るか
水素・燃料電池が、私たちのエネルギーの選択肢のどこに位置するのかの土台・約 4
まず 4 分で学ぶ
脱炭素の現実
なぜ白金頼みを減らすことが、脱炭素技術の実用化に効くのか・約 5
まず 5 分で学ぶ

教養の視点

白金は、指輪にも使われるほど高価な貴金属です。水素と酸素から電気をつくる燃料電池は、その白金を触媒として頼っています。だから燃料電池には昔から、悩ましい板挟みがありました。

触媒の白金は、粒を小さくするほど反応する表面が増えてよく働きます。ところが小さな粒は運転中に溶け合って大きくなり、性能が落ちてしまう。活性(よく効く)と耐久(長持ち)は、ふつう一方を立てれば他方が倒れる関係だったのです。ワシントン大学セントルイス校のチームは、この二者択一を触媒そのものではなく“入れ物”で解きました。放射状に細い穴が走る中空の炭素球をつくり、その穴に白金コバルトの粒を閉じ込める。すると1000℃まで熱して規則正しい構造に整えても、粒は5ナノメートル以下のまま散らばって固定される。結果、15万回の過酷な電圧サイクル(およそ2.5万時間の運転に相当)を経ても性能の85%を保ちました(Nature Nanotechnology、8月6日)。

意味はこうです。燃料電池は脱炭素の電源の一つとして期待されますが、高価で産地の偏る白金への依存がコストの壁でした。白金をコバルトと組ませて量を減らし、しかも長持ちさせられれば、電力を食うデータセンターや車の動力として現実味が増します。

持ち帰れる見方はこうです。「性能か耐久か」のように見える板挟みは、当事者(ここでは白金の粒)そのものより、それを支える“構造”を変えると両立できることがある。トレードオフは動かせない前提ではなく、設計で押し広げられる余地だ——技術のニュースを読むとき、まず「何と何の板挟みを、どこで解いたのか」を探すと芯が見えます。

読み解きチェック

学んだ概念を、この記事に当てはめてみましょう
0 / 2
Q1この触媒開発が解こうとした「板挟み(トレードオフ)」は、どれですか?
Q2この改良が白金の使用量を抑えることを狙ったのは、なぜ実用化にとって大事なのですか?

さらに深く

同じ日のほかのニュース

同じ概念の過去ニュース

再生可能エネルギー・エネルギーの保存と変換・イノベーション