太陽の表面は、のっぺりした火の玉ではありません。細かく見ると、煮え立つ鍋のように「粒(粒状斑)」がびっしり湧き立っています。イノウエ太陽望遠鏡が新たに捉えたのは、その粒の縁にできる幅20キロほどの小さな渦でした。20キロというのは、1ユーロ硬貨を180キロ先から見分けるほどの細かさ。今の技術の限界に挑んで、ようやく見えたものです。
面白いのは、この渦の正体です。速さの違うプラズマの層が擦れ違うと、その境目が波打って巻き込む——「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」と呼ばれる現象で、海面に風が吹いて波が崩れるとき、空に「波状雲」がうねるときと、まったく同じ物理です。地球の水や空気で見慣れた渦が、100万度のプラズマの上でもそっくり同じ形で現れていた。研究者は Nature に、これらの渦が磁場をねじって上空へ運び、プラズマをかき混ぜる様子を報告しました(8月5日)。
なぜ重要か。太陽には長年の謎があります。表面は約5500℃なのに、その外側に広がるコロナは100万度と、けた違いに熱い。熱源から離れるほど冷えるはずなのに逆転しているのです(コロナ加熱問題)。この小さな渦は、エネルギーを表面から上空へ運ぶ担い手の候補で、謎を説明する糸口になりえます。
持ち帰れる見方はこうです。舞台もスケールもまるで違う現象——台所の鍋、海の波、太陽の表面——が、同じ物理法則で結ばれていることがある。宇宙のニュースで「見たことのある形」に出会ったら、それは地上で培った直感がそのまま使えるサインです。