天然ガスから水素を作ると、これまでは決まって二酸化炭素(CO2)が気体として排出されていました。三菱重工業は2026年9月9日、この常識を変える装置を開発したと発表しました。天然ガスの主成分であるメタンを熱で分解し、水素と炭素に分ける「メタン熱分解」という方式で、発生した炭素を気体のCO2ではなく、固体として回収できるといいます。
ここで働いているのは、エネルギーは作れず、形を変えるだけという物理の大原則です。天然ガスという化石燃料に閉じ込められたエネルギーと物質を、水素(エネルギー)と固体炭素(貯蔵や資材に使える物質)に姿を変える——燃やしてCO2として空気中に逃がしていたものを、形を変えてとどめておく発想です。
固体になった炭素は、そのまま貯蔵したり、道路の舗装材などの産業資材に使ったりできるといいます。脱炭素には様々な道筋があり、それぞれに一長一短があります。今回の技術は、再生可能エネルギーへの全面転換を待たずに、今ある天然ガスのインフラを生かしながら排出を減らせる点が特徴です。三菱重工は主力の発電用ガスタービンとセットで電力会社などに売り込む方針で、2028年をめどに実証を始める計画です。
大きな技術転換は、ゼロから生まれるとは限りません。既存の設備と組み合わせられる技術ほど、現実の脱炭素を早く前に進められる——そんな見方もできそうです。