山火事が、自分で雨雲を——正確には嵐を——作った。7月25日、フランスの大規模な山火事の上空に「火災積乱雲(pyrocumulonimbus)」が現れ、同国では初めて報告されました。火が自前の気象を生むこの現象を入り口に、災害を大きくする「型」を読み解きます。
7月、スペインでは約5万ヘクタール、フランスでは4.2万ヘクタール超が焼けました。背景には条件の重なりがあります。湿った冬で植物がよく茂り、その後の熱波と乾燥で草木がよく燃える燃料に変わり、時速65キロの強風が火を広げた。乾いた燃料と風という舞台が整っていたのです。
では、なぜ火が「自前の嵐」を作れるのか。ここで効くのが積乱雲の仕組みです。ふつうの積乱雲は地表で暖められた空気の上昇から育ちますが、山火事はその熱を桁違いに供給します。強烈な上昇気流が水蒸気を高く持ち上げて雲を作り、やがて突風や落雷を伴う積乱雲になる。そして——ここが肝心です——その突風は延焼を速め、落雷は離れた場所に新たな火をつける。
つまり、火が積乱雲を生み、積乱雲がさらに火を広げる。結果が原因に戻って強めていく正のフィードバックのループです。打ち消し合って落ち着く負のフィードバックと違い、正のループは暴走しやすい。だから被害は、原因の大きさに比例した足し算ではなく、掛け算で膨らみます。記事はこの火災を温暖化の直接の結果とは断定していませんが、極端な条件が重なりやすくなるほど、こうしたループは着火しやすくなる——だから緩和と適応の両方が要ります。
持ち帰れる読み方はこうです。災害や環境のニュースで「原因→結果」が一方通行に見えても、結果が次の原因を強めるループがないかを探す。増幅のループを見つけられれば、なぜ被害が急に跳ね上がるのかが読めるようになります。