大きな災害で東京が動けなくなったとき、国の機能を誰が受け継ぐのか。今年7月に成立した副首都法は、その「代役」をあらかじめ指定する仕組みです。読売新聞が全国98の都道府県・政令市・県庁所在地に尋ねたところ、指定を目指すと答えたのは6道府県(北海道・群馬・愛知・大阪・広島・福岡)と6政令市(札幌・名古屋・大阪・堺・福岡・北九州)でした。「政令を見て判断する」という自治体も15あります。
ここで押さえたいのは、指定の柱が「東京圏と同時被災の可能性が低いこと」だという点です。地震は一つの場所だけでなく、広い範囲を同時に揺らします。近すぎる場所は、同じ災害で一緒に倒れてしまう。バックアップとは「離れていること」に価値がある仕組みなのです。
もう一つの狙いは、平時の東京一極集中を和らげ、経済圏を多極にすることです。人や仕事がなぜ一か所に集まるのかは、都市化の力学そのもの。防災のための離れた拠点と、集まりたがる力とは、必ずしも同じ向きではありません。
そして、動くのは国ではなく自治体のほうです。指定の要件は政令で決まる見通しで、担当者からは「準備しないと乗り遅れる」という声も上がっています。愛知県知事のように、指定が持つブランド効果を挙げる声もあります。防災の代役という目的と、地域の将来を左右する機会という側面が、ひとつの制度に同居しているわけです。
制度のニュースは、「何のためにあるのか」と「誰が、何を期待して手を挙げるのか」の二つを並べると読みやすくなります。この二つが一致しているか、ずれているかが、あとから制度の姿を決めていきます。