飛行機は、車のように電気で走らせるのが難しい乗り物です。だから航空業界の脱炭素は、燃やしても差し引きの排出が少ない燃料——SAF(持続可能な航空燃料)に望みを託しています。三菱商事が穀物大手ADMと組み、大豆やトウモロコシからそれを作ろうとしているのは、その大きな流れの一場面です。
ここで立ち止まりたいのは「原料を畑から採る」という一点です。脱炭素は、たいてい「エネルギーを別の何かで置き換える」話になります。置き換える先に無限の余裕があれば悩みませんが、作物を育てる土地も水も有限です。食べ物に回すはずだった畑を燃料に回せば、「食料か、燃料か」という綱引きが生まれる——これは資源の限りを考えるときに何度も顔を出す型です。
ではこの提携はどう読めばいいのか。鍵は、ADMがすでに大豆をしぼる搾油工場と世界的な調達網を持つ点にあります。ゼロから燃料工場を建てるのではなく、既存の食料サプライチェーンの「隣」に燃料事業を足す。うまくいけば食料生産を大きく削らずに燃料を取り出せるかもしれず、しくじれば食卓と航空券の両方に値段の圧力がかかる。良いか悪いかを先に決めるより、どこで何と何が競合しているかを見るのが先です。
だから持ち帰れる読み方はこれです。脱炭素のニュースを見たら、「その燃料や電力の"原料"はどこから来て、何と奪い合うのか」を問う。太陽光ならパネルに使う金属、電気自動車ならリチウム、SAFなら作物や廃食油——きれいなエネルギーにも必ず原料の出どころがあり、そこに次の論点が潜んでいます。