歯みがき、通勤路、スマホをつい開く癖——習慣は「一つのかたまり」に感じます。でも京都大学のグループは、その塊を二つの部品に分けて見せました。
淺岡希美助教と林康紀教授らは、マウスに人のような習慣行動を作り出す実験を組み、二つの問いを切り分けました。ある行動が習慣になるかどうかと、習慣になった後でどれだけ繰り返すか(頻度や量)。すると、この二つを脳内の別々の神経回路が決めていることが分かったのです。「頻度」を決める回路の働きが弱いマウスは、習慣を身につけることはできても、その回数が元より減ってしまいました。習慣化のスイッチと、量を決めるダイヤルが、別々にあったわけです。
なぜこれが大事か。習慣は、繰り返しが身体に染みついた記憶の一種です。そして手を洗い続けずにいられない、確認をやめられないといった強迫症では、この「習慣の量」が過剰に膨らみます。もし量を決める回路をピンポイントで狙えるなら、病的な習慣がどう生まれ、どう抑えられるかの手がかりになる——研究チームはそこを見据えています。
持ち帰れる読み方は、脳の外にも効きます。一つに見える現象を、より小さな別々の仕組みに分けて調べると、原因も対処も見えやすくなる。「習慣」を『なるか』と『どれだけ』に割ったこの研究のように、まとめて眺めていた対象をどこで切るか——それが、心の不調を「意志の弱さ」で片づけない科学の一歩でもあります。