「給与は34年ぶりの勢いで増えている」——そう聞くと景気のいい話に思えます。でも同じ日の発表には、もう一つの数字が並んでいました。実質賃金は1.6%増。額面の伸び(3.4%)の半分以下です。この差こそ、賃金ニュースを読むときの要です。
厚生労働省が8月5日に発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、一人あたりの現金給与総額は53万1677円で前年同月比3.4%増。3%を超える伸びが5カ月続くのは1992年3月以来、34年3カ月ぶりでした。基本給にあたる所定内給与も3.4%伸び、春闘の賃上げや最低賃金の引き上げが効いています。
ここで効くのが、名目と実質の区別です。名目賃金は額面の金額、実質賃金は物価を差し引いた「実際に買えるモノの量」。6月の消費者物価は1.9%上がっていました。だから額面が3.4%増えても、物価がその半分以上を食べてしまい、手元に残った購買力の増加は1.6%——これが実質です。
実質のプラスが6カ月続いたのは、たしかに前向きな変化です。ただ「6カ月」という短さは、賃金と物価がまだ僅差で追いかけ合っていることの裏返しでもあります。物価の上げ幅が5月の1.7%から6月は1.9%へ広がったように、少し物価が動けば実質は簡単にマイナスへ振れます。
持ち帰れる読み方はシンプルです。「賃金◯%増」の見出しを見たら、同じ期間の物価上昇率を隣に置く。名目と実質、二つの数字が揃って初めて、暮らしが本当に楽になったのかが読めます。