「実質」という言葉が付いた瞬間、そのニュースは賃金のニュースであると同時に「物価」のニュースでもあります。
名目賃金は「もらう金額」、実質賃金は「その金額で買える量」です。名目賃金が2%増えても、物価が3%上がっていれば、暮らしはむしろ苦しくなっている——この目減りを捉えるために、名目賃金を物価指数で割り引いたものが実質賃金です(インフレとデフレ)。日本では物価高が先行して実質賃金のマイナスが長く続いてきたため、プラスが続くこと自体がニュースになっています。
ただし、この統計を読むときの注意もあります(統計の読み方)。毎月勤労統計は事業所ベースの「平均」なので、賃金の低いパートタイム労働者の比率が変わるだけでも数字は動きます。前年同月比は、比べる相手である前年の数字が低ければ大きく出ます。そして速報値は後から改定されることが珍しくありません。「自分の給料は上がっていないのに」という実感と平均値のずれは、どちらかが嘘なのではなく、平均という要約の性質です。
もう一つの読みどころは、この数字が政策の判断材料になることです。賃金の伸びが物価に追いつき、「賃金と物価の好循環」が確認されれば、日銀が金利のある世界へ正常化を進める根拠になります(金融政策と財政政策)。毎月出る統計だからこそ、今月の数字に一喜一憂せず、方向と持続性を見る習慣が効いてきます。