私たちの細胞の中には、微小管という細い管が張りめぐらされている。細胞の形を保ち、分裂のときに染色体を引っ張る「骨格」だ。この精巧な部品は、いつ、どこで生まれたのか——長らく空白だったその起源に、理研などの研究が一歩を刻んだ。
見つかったのは、アスガルド古細菌の一種(ヘイムダル古細菌)が持つ、微小管そっくりの「ミニマル微小管」。古細菌はヒトとはかけ離れた単純な微生物だが、その部品はヒトの微小管と同じ四つの特徴を備えていた。しかも構造はより細く、単純だった。いわば完成品の一歩手前の設計図が、27億年前の微生物に残っていた形だ。
なぜこれが大発見なのか。鍵は進化の考え方にある。まったく違う生き物が同じ精巧な部品を持つとき、それは偶然の一致ではなく、遠い共通の祖先から受け継いだ痕跡と読める。ヒトを含む複雑な細胞(真核生物)が、単純な古細菌から立ち上がってきた——その筋書きを裏づける物証が、また一つ増えたわけだ。
ただし、一つの発見で物語が完結するわけではない。科学的方法は、証拠を積み重ねて仮説を確かめていく営みだ。持ち帰れる読み方はこうだ。「Aの祖先がBで見つかった」というニュースを見たら、それは共通祖先という一本の線でつながる話だと捉える。生命の歴史は、こうした部品の来歴をたどることで、少しずつ描き直されていく。