「アメリカの雇用が2.3万人も減った」——このヘッドラインだけ見ると、急ブレーキがかかったように感じます。でも雇用統計は、単月の増減を額面どおり受け取ると読み違えます。効くのは二つの見方です。
米労働省が8月7日に発表した7月の雇用統計で、非農業部門の就業者数は前月比2万3000人減。8万人前後の増加という市場予想を大きく下回りました。ところが失業率は0.1ポイント下がって4.1%です。この「就業者は減ったのに失業率は低下」というちぐはぐさは、雇用の指標が一枚岩でないことを教えてくれます。就業者数は企業(事業所)への調査、失業率は世帯への調査。集計のもとが違うので、短い期間では別々の向きに動くことがあります。しかも失業率は、職探しをあきらめた人を「失業者」から外すため、雇用が弱くても下がることがあります。
もう一つの要は、改定です。今回は7月の数字と同時に、5〜6月分の就業者数も下方修正されました。雇用統計の速報値は、あとから回収される調査票や季節調整の見直しで書き換わります。つまり最初に出る数字は暫定。だから一つの月の速報に振り回されるより、過去分の改定も含めた数か月の流れ(基調)で読むのが定石です。
そもそも雇用は、景気の動きに少し遅れて反応する遅行的な指標です。企業は先行きが怪しくなっても、すぐには人を減らしません。だから雇用の弱まりは、景気減速の「確認」であって「予兆」ではないことが多い。
持ち帰れる読み方はシンプルです。雇用統計を見たら、単月の数字ではなく「過去分の改定」と「数か月の基調」を隣に置く。速報の一点だけで判断しない——この構えが、次にどの経済指標のニュースが来ても効きます。