「金利は1%のまま据え置き」。見出しだけなら、今回も動きはなかったように見えます。ところが同じ日、日銀は物価の見通しを2.8%へ引き上げました。金利は動かさないのに、物価はもっと上がると見る——この一見ちぐはぐな組み合わせにこそ、金利ニュースを読むコツが隠れています。効くのは、金利を「数字の高さ」でなく「物価との差」で見るという一手です。
中央銀行の仕事は、物価を落ち着かせることです。物価が上がりすぎれば金利を上げてお金を借りにくくし、熱を冷ます。逆に景気が弱ければ金利を下げて支える。では今回、なぜ物価見通しを上げたのに金利を据え置いたのか。ここで金利の本当の重みを思い出すと、ちぐはぐが解けます。同じ「1%」でも、物価がほとんど動かない国なら十分に高い金利ですが、物価が2.8%上がる国では、物価の伸びに金利が追いついていません。物価を差し引いた「実質金利」で見ると、日本の金利はまだマイナス——つまり、数字は上がってもお金はまだ借りやすい、緩和的な状態が続いているのです。
だから日銀は、あわてて追加利上げに動く必要はないと考え、6月に上げたばかりの効果を見極める側に回りました。もっとも、これは全員一致ではありません。3人の委員は「物価がここまで上がるなら、いま抑えるべきだ」と追加利上げを主張して反対しました。据え置きという静かな決定の下でも、内部では次に動く向きをめぐって温度差がある、という信号です。
成長の見通しも上方修正されました。理由に挙がったのがAI関連の需要です。データセンターや半導体への投資が景気を押し上げる、という読みが物価の先高観にもつながっています。
持ち帰れる読み方はこうです。金利ニュースで数字を見たら、「高い・低い」で驚く前に、その国の物価がどれだけ上がっているかを並べて、差を取ってみる。物価を引いた実質で見れば、同じ1%でも、いま経済にブレーキがかかっているのか、まだアクセルが踏まれたままなのかが読み分けられます。